半年間で1次試験に合格!中小企業診断士の独学おすすめ勉強方法と教材
2014年、「中小企業診断士」の試験にチャレンジしました。
勉強のスタートは2月になってから、しかも予備校等には通わずに独学するという状況でしたが、勉強方法を試行錯誤しながら進めてきたおかげで、1次試験には余裕を持って合格(自己採点:500点)することができました。
今回は、私が短期間で合格するためにやってきた勉強方法や教材などを、ざっくりとまとめておきたいと思います。(最終更新:2017年5月)
診断士試験を受けようと思ったいきさつについてはこちら。
なぜ診断士を受けようとしたのか?
目次
勉強方法とメイン教材
今回、診断士試験の情報収集をして受験を決意したのは2月に入ってから。1次試験は8月なので、あと6ヶ月、半年ほどしかないことになります。この時点では、さすがにちょっと勉強時間が短すぎて全部の範囲は無理かなと思っていましたが、科目合格だけでも目指してみようと思いながら勉強に取りかかりました。
まず勉強の範囲と到達レベルをザッと把握したいと思い、こちらの書籍を通読。
また診断士受験に関する情報は、定番ですがこちらのウェブサイトをよく閲覧していました。
中小企業診断士試験 一発合格道場
で、その他書籍やネットも含めていろいろと調べてみると、1次試験突破までには標準的に600〜1000時間程度の勉強時間、つまり残り6ヶ月強=200日前後と見積もると、1日3時間以上の勉強が必要なようです。またTACなどの予備校に通う人が大半なようですが、独学ではさらに多くの時間が必要になるかもしれません。
普通のサラリーマンは「通勤時間」を使うしかない
普通の30歳前後のサラリーマンが、家の机で1日3時間も勉強時間を確保するのは相当に困難なことだと思います。私も普段の帰宅時間は平均して20時半ころ。そこから夕食や家族サービス、身支度の時間を考えると、どうやっても3時間の捻出は難しい。
そこで目をつけたのが、いま往復2時間かかっている「通勤時間」の活用です。
(と言うか、冷静に考えるとそれ以外選択肢はないんですよね…。)
ただ都市部の通勤電車はほぼ満員で座ることは難しいですし、私は片道で3回乗り換えていますので、その度にカバンから教材を出し入れするのも大変です。
何かよい方法はないかと思っていたときに見つけたのが、「音声」を使った学習方法。
中小企業診断士の音声教材でポピュラー(というか現時点で唯一)なのは、『通勤講座』です。
中小企業診断士 通勤講座 | 通勤時間で中小企業診断士に合格
TAC、クレアールなどの有名予備校も音声ダウンロード教材を提供していますが、こちらはあくまで15-20万円以上する本講座のオプションとしての位置付けです。
資格の学校TAC[タック]| 中小企業診断士|音声DLフォロー・Webフォロー
学習スタイル | 中小企業診断士を通信で合格するならクレアール
手頃なスマホ教材であれば『レボ』という会社が動画講座(49,800円〜)を出していますが、電車の中でボーッと外を眺めながらも学習できる音声教材という趣旨からは少し外れます。
また5,800円〜という破格の音声を含む教材も見つけましたが、安すぎて質がどうなのかわかりません…。
メイン教材を『通勤講座』に決定
『通勤講座』は第1回分のトライアル版が用意されてるので試してみたところ、以下の点がよいなと感じました。
- はっきりしたナレーション、ちょっとしたサウンドエフェクト等があって聞きやすい
- 「記憶フラッシュ」など、カリキュラム構成がこなれている
- 手元のiPhoneで要所をまとめたマインドマップを確認できる
- PC、スマホの両方で単元ごとの問題集を解くことができる
このナレーションの声、運営している会社の社長本人がやっているんですね。あまりに聞きやすかったので、最初はナレーターを別途雇っているのかと思いました。
問題集も含めて全体的に完成度が高く、これはいけそうだと判断。その後、「1次2次合格コース 問題集・過去問講座つきセット(59,800円)」を注文しました。早速1次試験分のデータを全部ダウンロードし、音声ファイルはiPhoneのミュージックアプリに同期、テキストとマインドマップはDropboxに入れておきました。
ちなみに後日、印刷したマインドマップ集も注文しました。こちらは問題集で間違えたところなどをメモして集約するベースとしての役割を担ってもらいました。自分でも印刷できますが、カラーで1枚50円換算だと、注文した方が安上がりなんですよね。
音声教材のメリット
学習のペースメーカーになってくれること
自分で本を読みながら勉強していると、どうしても眠くなってしまったり、モチベーションが上がらない時は先への進みがはかどらないことがあります。
しかしそんなときでも音声教材であれば、一定のペースで再生を続けてくれるため、勉強の進行を止めることがありません。また後述するアプリを使えば、再生速度を自由に調整することも可能です。
聴覚の利用が記憶を助けてくれること
企業経営理論などのストーリー性のあるものや、暗記3兄弟と言われる「システム」「法務」「中小企業経営」は、単語を目で追うだけでなく、音からも刺激を受けると覚えやすいと感じました
音声教材デメリット
数字、計算、グラフには弱い
診断士試験の7つの科目のうち、特に音声による学習が難しいのが「会計」と「経済」です。
「会計」科目は数字が出てくることが多いので、音声だけでは訳がわかりませんし、簡単な計算さえも頭の中だけではままなりません…。また「経済」科目では、内容をグラフと合わせて理解することが重要なので、こちらも音声だけではよい学習ができません。
私はこの2つの科目は、特に優先して土日に勉強するようにしました。土日なら、家の落ち着いた環境で、数字やグラフの掲載されたテキストを目で追いながら効果的に学習できます。
補助教材
『通勤講座』は音声&テキストのインプット教材、基本問題集、過去問抜粋版の3つの教材が手に入ります。ただ基本の部分や頻出分野に特化しているので、TACの分厚いテキストなどに比べると内容が不足しています。そこで以下の本や教材を買い足していきました。
基本的には、「通勤講座の内容を幹として、過去問でそれを太らせる」方向でよいと思います。
過去問
通勤講座には、過去問は5年分からの抜粋版しか付属していません。中小企業診断士 落ちる人が受かる人に変わる50の法則という本には、「過去問5年分では落ちる。10年やれ」と書いてあったので、できるだけ安価に10年分を集められるものを探したところ、以下の問題集がよさそうでした。
同友館 1次試験過去問題集(オススメ度:★★★★☆)
こちらの問題集は直近2年の過去問に加え、本のカバーについている応募券を郵送することで、平成13年からの過去問を全てPDFでダウンロードすることができます。1年あたりの過去問価格では、この方法が一番安く済むと思います。
ただPDFでの入手になりますので、回答を直接書き込みができない点や、問題と解説との見比べが少しやりにくい点は紙に負けるところです。私はiPadで問題を表示しながら、回答をオリジナルのシートを印刷したものに記入して使っていました。回答用紙は汎用にしていますので、よかったら使ってください。
企業経営理論
有斐閣アルマ 組織論(オススメ度:★★★☆☆)
有斐閣アルマ 組織論(オススメ度:★★★☆☆)
「有斐閣アルマ」なんて出版社は診断士の勉強をするまで知りませんでしたが、この分野ではポピュラーのようです。両書籍とも目を通しましたが、試験に直接役立つというよりは、診断士として長期的な視点で見たときに身になるようなイメージなので、図書館で無料で借りられるなら読んでもよいでしょう。
ちなみに組織論分野は出題が多い割に適当な本が少ないので、結構苦労します。
会計・財務
財務3表一体理解法(オススメ度:★★★★★)
具体例をどんどん追加しながら解説が進んでいくというスタイルのこの本は、会計のド素人にもわかりやすくてとてもよかったです。簿記の細かい仕分けにとらわれることなく、こうした全体の構成を把握することは大事ですね。
また同じ著者の財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方は、2次試験の経営分析に直結する内容なので、合わせて目を通すことをおすすめします。
運営管理
特になし。通勤講座の内容に過去問で補足すれば大丈夫です。
経済
特になし。マクロ経済、ミクロ経済ともに通勤講座の内容で十分だと思います。
経営情報システム
図解でよくわかる ネットワークの重要用語解説(オススメ度:★★★★☆)
IT、システムに関する仕事をしているため、この科目は得意でしたが、細かいネットワーク用語についてはフォローする必要があったため、この書籍を復習として使いました。かわいいイラストが理解を助けてくれます。
マンガでわかる統計学(オススメ度:★★★☆☆)
統計に関する問題は25問中の最後の2問ほどしか出ないため、捨ててもよいといえばよいのですが、欲をかいて勉強してみました。大学の講義で一度習っていたのですが、マンガだと理解も進みやすいと思います。
経営法務
会社法がよくわかる講座(オススメ度:★★★☆☆)
法務については会社法、知財関連法の2分野がメインですが、これも通勤講座と過去問で合格レベルまで到達できると思います。こちらの書籍は、復習用に通読しました。
中小企業経営・政策
中小企業白書(オススメ度:★★★★☆)
これはオススメというよりも必携の書籍でしょう。通勤講座のテキストで数値の概要を把握できるので、その補足として手元に置いておけると安心です。ただ価格も高いため、図書館で借りるのがよいと思います。
スピード問題集(オススメ度:★★★★☆)
この業界では有名なスピード問題集。基本的には過去問があれば事足りるのですが、中小企業経営の科目については、当然ですが過去問でカバーすることが難しいため、最新の問題集で補足してあげる必要があります。
スピード問題集はiOSのアプリでも同じものが販売されています。私は移動時間中に何度も回したいと思ったので、このアプリ版を購入しました。アプリ版は間違えた問題のみ繰り返して練習できる点がよいと思います。
具体的な勉強スケジュール
大日程の作成
およそ2週を1単位として、下のようなおおまかな計画を立てました。
とにかく薄く速く、何回も繰り返し行うのがポイントです。
平日通勤中 | 平日自宅 | 休日 | |
---|---|---|---|
2月後半 | 通勤講座1周目 | 通勤問題集 | 財務 |
3月前半 | 通勤講座1周目 | 通勤問題集 | 財務経済&二次予習 |
3月後半 | 通勤講座2周目2倍速 | セレクト過去問1周目 | セレクト財務経済2周目 |
4月前半 | 通勤講座3周目2倍速 | セレクト過去問2周目 | セレクト財務経済2周目 |
4月後半 | 通勤講座4周目2倍速 | 過去問10年1周目 | 過去問10年1周目 |
5月前半 | 通勤講座5周目2倍速 | 過去問10年1周目 | 過去問10年1周目 |
5月後半 | 通勤講座6周目2倍速 | 過去問10年1周目 | 過去問10年1周目 |
6月前半 | 通勤講座7周目2倍速 | 過去問10年1周目 | 過去問10年1周目 |
6月後半 | 通勤講座8周目2倍速 | 過去問10年1周目 | 過去問10年1周目 |
7月前半 | 通勤講座9周目2倍速 | 過去問10年2周目 | 過去問10年2周目 |
7月後半 | 通勤講座10周目2倍速 | 過去問10年2周目 | 過去問10年2周目 |
8月前半 | 通勤講座11周目2倍速 | セレクト過去問 | セレクト過去問 |
基礎インプット期(2月-3月前半)
通勤講座、およびそれに対応する付属の問題集は全部で58単元あります。
1つの音声教材が1時間前後なので、通常スピードであれば1日2単元。会計、経済は土日に集中してやるとすると、およそ4週間で1周まわる計算です。
基本的に通勤中に聞いた講座に対応する問題集を、帰宅後1時間程度かけて行う流れです。問題はパソコンから解くことができ、解説も丁寧なので知識の定着をはかることができます。
また前述の補足教材もこのあたりで並行して読み進めていきます。
インプット補足期(3月後半-4月前半)
通勤講座の内容をもとに基礎のインプットを終えたら、通勤時間は2周目以降の再生に入ります。ここからはiPhoneの倍速再生アプリを使い、2週間で1回転させていきました。
帰宅後は、これも通勤講座付属の「セレクト過去問」をパソコンを使って進めていきます。17単元あり、平日は1日1単位、土日は会計と経済を1日2単位進めれば、これも2週間で1回転です。
セレクト過去問は、過去問から頻出分野を抜粋してくれているので、効率よく学習ができます。まだこの段階では正答率を気にするというよりも、主に解説を読んでインプットとして利用しています。
このあとのアウトプット期間を考えると、ゴールデンウィーク前までにはインプット期をしっかり終えておくのがペース的にはよさそうです。
アウトプット期(4月後半-7月後半)
相変わらず通勤時間については、通勤講座の音声を倍速で2週間単位で回していきます。計10回以上聞いているため、だんだん内容を口ずさむことができるようになりました。
帰宅後は、同友館の過去問10年分を使って演習をしていきます。基本的に1日1科目、平日は60分試験の科目を解き、答え合わせと理解も含めて90分程度の時間を割きます。土日は90分試験の科目を解き、120分程度の時間を割きます。
この過去問演習で間違えた部分については、通勤講座で追加注文したマインドマップ冊子版の該当箇所に手書きでメモをしていきました。こうすれば最後にこのマインドマップだけ復習すればOKです。
また過去問2周目は、1周目に間違えたり自信がなかった問題だけを行うようにして回転期間の短縮をはかりました。これでセレクト過去問と合わせて、頻出分野は4-5回、それ以外の分野も最低2回はさらえることになります。
総仕上げ期(8月前半)
正直、ここまでくるとやることがなくなってきます…。この時点で過去問はほぼ60点を割ることはなくなり、あとは仕上げとしてセレクト過去問を通して解いてみたり、暗記系科目のケアを集中的にやっていきます。
特に中小企業経営の科目は詰め込みでも何とかなってしまうので、この時期にスピード問題集アプリ版を何回転もさせました。
小日程の作成
上記の大日程をベースに、1日単位の小日程計画も用意しました。
向こう1-2週間について、「その日にやる範囲」、つまり単元の番号や科目名などを記していきます。
またこちらは計画と同時に記録の役割も持たせているので、実際の勉強時間、および累積勉強時間の欄を設けて、成果が積み上がっていくのがわかるようにしました。
ちなみに大日程、小日程ともにGoogleスプレッドシートを用いて作成しています。
その他便利なグッズ
Bluetoothイヤホン
通勤時間で音声を使って勉強するのに、イヤホンは必携です。ただiPhone付属の標準のイヤホンですと、本体から伸びる線が異様に気になって取り回しがしづらいので、私はイヤホンの無線化をしました。
Bluetoothイヤホンは様々発売されていますが、私が重視したのは「音質」よりも「途中で途切れないこと」。音楽であれば多少ブツブツと途切れても問題ありませんが、語学や資格学習の音声を聞く場合は、一瞬でも聞こえない部分があると内容の理解を妨げます。
結局、なるべく途切れないBluetoothイヤホンということで評判が高かったバッファローの商品を購入しました。
見た目は結構大きな物体を耳につける感じですが、中はほとんど空洞なので重さは感じません。購入後継続して使っていますが、ダウンやジャケットのポケットにiPhoneを入れていても、途中で途切れたことはほとんどないと言ってよいでしょう。他のBluetoothイヤホンを試したことはありませんが、こちらの商品なら学習に支障は出ないと思います。
ちなみに電池の持ちはフル再生を続けておよそ4時間ほど。私の場合は通勤往復2時間なので、2日に1回充電すればよいことになります。
2倍速再生アプリ
通勤講座の音声教材には、通常版と2倍速再生版の2種類のファイルが付属してきます。ただし両方をiPhoneに入れると容量を食いますので、できるだけ1つのファイルで済ませたい。2倍速再生に対応したアプリをいろいろと探しましたが、一番便利だったのがこのSpeedUpというiPhoneアプリです。
一番便利な点が、標準のミュージックアプリと同様、スリープ状態からでも再生等の操作ができるということ。これは有料版のみの機能になります。
結局合格までどのくらいの勉強時間が必要なのか?
小日程の記録を見ると、2月中旬から8月上旬まで、通勤の勉強時間を合わせて計480時間を勉強にあてていました。
ただ結構”水増し申請”している感があるので、純粋な勉強時間はもう少し少ないかもしれません。
毎年科目によって難易度に波があり、私も2014年は「法務」「情報システム」が50点台と苦戦しましたが、個人的には、過去問10年分を3回通せる力があれば、こうした軽い事故があっても合格できるレベルに達すると感じます。